「泣いた。」
「えっ?」
「だから泣いた。」
「何に?」
「『もしドラ』を読んで泣いた。」
「あのラノベに?」
「ラノベじゃねーよ。」
「表紙からしてどー見てもラノベじゃん。」
「まー確かに。」
「どっちだよ。」
「でも泣いたのは嘘偽りない事実なんだからしょうがない。」
「オマエ、歳、いくつだよ?」
「もうすぐで40。」
「40っていやー、「不惑」だよ。不惑がラノベ読んで泣いてどーすんだよ?」
「不惑でも不覚にも泣いた。」
「誰が韻を踏めと言った。」
「で、なんで泣いたの?やっぱり”感動した”とかそーゆーやつ?(ニヤリ」
「いや、別に感動はしなかったんだけどね。」
「じゃーなんで泣いたの?」
「さー?」
「さー?ってアンタ。」
「自分でもよく分かんないんだよねー、なんで泣いたのか。」
「そんなもんですかねー」
「登場人物の設定はステレオタイプだし。」
「ふむふむ。」
「ストーリーはご都合主義だし。」
「で?」
「イラストとかあざといし。」
「オマエ、褒めてんの?けなしてんの?」
「でも、泣いちゃったんだよねー。」
「ちなみにどのシーンで泣きが入ったの?」
「えーっと、◯◯◯が◯◯◯したシーンかな?」
「◯◯◯じゃ分かんねーよ。」
「だってブログ読んでいる人のネタバレになるじゃん。」
「誰だよ、それ?」
「あっ、いや、こっちの話し。」
「なんでオマエがそこまでして泣きが入るのかねぇ?」
「うーん、登場人物が”一途”なところかな?この本にも何度か出てくるキーワードなんだけど、”真摯さ”が伝わってくるんだよね。」
「真摯さ?」
「そー、真摯さ。」
「真摯さねー?」
「登場人物がみんな真摯に野球に取り組むんだよね。その姿が熱いよね。」
「ふーん、そんなもんかね。」
「で、この小説を書いている作者の、作品に対する想い、これも真摯さなんだろうけど、それも伝わってくる。」
「ふんふん。」
「で、この作品で引用されているドラッカーの『マネジメント』の言葉たちの随所にも真摯さが感じられるんだよね。」
「それってさー。」
「ん?」
「ドラッカー自身がスッゲー真摯な人なんだからじゃない?」
「おー、なるほど!」
「”マネジメントを司る者、真摯たれ”と言っているドラッカー自身が一番真摯な人。」
「それは確かに言えてるね。」
「真摯さってさ、人として、人間として結構普遍的なもんじゃない?」
「普遍的と言うと?」
「その時代によっての流行り廃りとかを超越した、真の「人として大事にすべきこと」って言うか。」
「良いこと言うね。」
「そういう根っこの部分で、登場人物と作者、ドラッカーが繋がっているんじゃない?」
「なるほど、そーゆー部分にオレも共感したのかもしれないね。」
「オマエがそこまで言うのなら、オレも読んでみようかな?」
「おー、是非是非。」
「貸せよ。」
「買えよ!」